ロゴスとレーマ 2

レーマ

 ῥῆμα(レーマ)を語源から見ると、 (Rheo + ma) から成り立っている事が分かります。Rheo は「言う、話す」という意味の動詞です。「μα」という語尾は注意が必要です。動詞等の後ろにつくと、「動作の結果や効果」という意味を含みます。この場合、Rheo の「言う」という動作の結果や効果を伴う事になります。

 マタイ 4:4「イエスは答えられた。『人はパンだけで生きるのではなく、神の口から出る一つ一つの言葉で生きる』と書いてある。」

 ここの「言葉」はレーマになっています。レーマが「言う」という動詞の効果を伴うもの、つまり、話された言葉の効果が現れるという意味を含んでいます。神の発言された言葉には、その結果や効果が伴うという事で説明できます。イメージとしては、「光よ、あれ」と言って天地を創造した言葉の効果がそれです。その言葉は光を創造してしまう効果(力)を伴いました。

 ルカ 1:37「神にとって不可能な事は何もありません。」

 ここでも、「レーマ」が使われています。より直訳なら、「神にとって、不可能な言葉は一つもない」になります。ギリシャ語では「一つ一つ」(πᾶν)と「言葉」(ῥῆμα)という2語が使われています。これは、預言の成就を指したり、言葉の効果が現れて、奇跡が起こるなどのケースでも同じです。

 エペソ 6:17「救いの兜をかぶり、御霊の剣、すなわち神の言葉を取りなさい。」

 御霊の剣はレーマです。Vine's Expository Dictionary によれば「御霊の剣としての言葉は、聖書全体としてのロゴスではなく、御霊が私たちに思い起こさせる一つ一つの御言葉であり、それらは必要な時や状況に応じるもの」としています。そして、「そのようにして聖霊が私たちに思い起こさせる為には、私たち自身がまず御言葉(ロゴス)を蓄えておく必要がある」としています。これは、ロゴスだけでは剣としての役割を果たさない事を意味しています。

 ここにロゴスとレーマの違いのヒントが隠されていますが、ロゴスが生かされる為に必要なのは、信仰なのです。ロゴスよりもレーマが重要だという部分は、そこにあります。しかし、レーマが「聖霊が話された」という事、それがより重要だと教えられたのです。こうして一部のグループが、レーマを「聖霊の声」として御言葉よりも重要視した為に、様々な極端な考えが出てきました。しかし、レーマは誰が語ったかさえ限定しません。

 マタイによる福音書 12:36「私はあなた方に言います。人は、口にするあらゆる無益な言葉について、裁きの日に申し開きをしなければなりません。」

 「あらゆる無益な言葉」を話すのは人です。そして、ここではレーマが使われています。レーマを「聖霊の声」として定義していると、この箇所の聖書の解釈はどうなってしまうのでしょうか?

 ロゴスは、幅広い意味で「言葉」です。ロゴスはレーマと同様に「話された言葉」の意味も含みます。レーマは単に「話された言葉」ではなく、「結果を伴う話された言葉」がより正確な定義です。

ロゴスとレーマ 3に続きます。